共同生活というのは、頭で想像するよりも難しい

ある女性は結婚して「夫は人が変わった」と言う。

「暗くなった、不機嫌になった」と言う。
しかしそれほど変わったわけではない。

結婚すると共通の体験をする。これが問題なのである。
共通の体験をしても共通の反応をするわけではない。

買い物するにしても、小さな買い物から大きな買い物まである。
どれを買うかで考え方の違いは出る。

セールスマンがちやほやする。ちやほやされて嬉しい人もいれば、
嬉しくない人もいる。たちまちセールスマンに対する二人の評価が違ってくる。

セールスマンにごまかされることもある。すると一人は、ごまかされたと
いうことで、神経症的自尊心が傷つき、怒る。

しかしもう一人は、それは済んだこととして先のことを考えようとする。
いつまでもそんなことに捕われて、悔しがって大切な時間を失うことの
ほうがよっぽどもったいないと考える。

すると傷つき怒ってるいるほうは、「お前はこんな舐められた真似をされて
悔しくないのか」と配偶者に怒る。配偶者の態度が面白くない。

怒りをストレートにぶつけるタイプもいれば、詰るという形で絡む人もいる。
また怒りをぶつけられないで憂鬱になるタイプもいる。

憂鬱な顔になるタイプと一緒に生活をしている人は、結婚前との違いを強調する。
すると「結婚前は私といると楽しそうにしていたのに、結婚してから
私といると不愉快そうにしている」といぶかることになる。

今度は憂鬱な顔を理解できない人のほうが結婚について考え込むようになり
別れようかと思ったりする。

共同生活というのは、頭で想像するよりも難しい。
それは人は性格が違う上に、何よりも同じことに同じ反応をするのではないからである。

結婚生活を始める前と後とでは二人の関係が違って当たり前なのである。
結婚して人が変わったというのではなく、結婚生活を始める前には、
それほどたくさんの共同の体験がなかったということである。