自分自身が弱者に対するいたわりがない
何かで自分が失敗したからといって、人間関係をはじめ周囲の事情は変わらない。
今まで相手に役に立っていて、急に役に立たなくなったからといって、二人の関係は変わらない。
相手は決して自分を見捨てはしない。自分はお金でもなければ、名誉でもなく、
労働力でもない。相手にとって自分は人間なのである。相手は自分が好きなのである。
失敗を極端に恐れる人、不安な人、自己蔑視している人、神経症的な人には
そのことがどうしても感情として分からない。
それは自分自身が弱者に対していたわりの気持ちがないからである。
自分が失敗した人を見て、「かわいそうに、今度は成功すればいいのに」と
思わないから、自分の失敗を恐れるのである。
自分が相手の失敗を軽蔑するから、自分の失敗を恐れる。
自分が相手の失敗を軽蔑するから、相手もまた失敗した自分を軽蔑するだろうと
思ってしまうのである。
自分の心の中に、役に立たない相手を見捨てる気持ちがあるから、逆に強い人に
自分が見捨てられる不安を持つのである。
弱者に対していたわりの気持ちが出てきたときに初めて、相手にとって自分は
お金でもなければ、名誉でもなく、労働力でもない、自分は人間なのであると
いうことが理解できるようになる。
神経症的不安に悩まされている人は、小さい頃自分が自分として求められた経験が
ないのである。親の気持ちを先取りして親の気に入るようなことを言わなくても
可愛がられたというような経験がないのである。