自分の強さを忘れてはいけない

支配的な親の期待と衝動に沿って成長した者は、自己実現できていない。
そして自己実現できないことの怒りは、人々の想像を超える
根強いものがある。

しかも自己実現していないことからくる憎しみは、
漠然としているが故にきわめて意識化しにくいものである。

例えば人への憎しみなどは、無意識のメカニズムを理解すると
意識化しやすい。

人から虐待されたとか、侮辱されたとかいう直接の行動に対する
憎しみは、いったん無意識に追いやられても意識化しやすい。

自己実現できなかったことに対する怒りは、無意識に追いやられたままで、
長くその人への影響を保持し続ける。

大人になってからの日常生活でも、無意識にあるものが心理的に
普通の人を支配者にしてしまう。

例えば妻の許しを得なければ何もできない夫のような人である。
妻に昔の支配的な親と同じ役割を持たせてしまう。

この過去の支配の中で、弱い人として今を生きれば、
トラブルは避けられない。

しかし、本人が忘れてはならないことがある。
それはここまで生きられた自分の強さである。

支配的な親に育てられた子供は、脅えた大人に成長するだろう。
人を信じることができない大人に成長するだろう。

それなのに、とにかく今まで何とか社会的に適応しながら
生きられたことは、ものすごいことなのである。
自分に自信を持っていい。