公平な取り扱いを不公平と感じるのは神経症者の特徴である
実際の両親とは違う理想化した親という幻想にしがみついている人は、
親以外の人についても幻想を持つ。
母親をこうあって欲しいというイメージでとらえていると、
結婚してからもうまくいかないことが多いであろう。
自分の妻をありのままに評価することができず、
こうあって欲しいという期待で妻をイメージする。
しかし現実の妻は違う。そこで妻に対して不満が出てくることもあろう。
現実の妻とはうまくコミュニケーションができないことになる。
彼は妻に一方的に甘える。しかし妻が彼に甘えることなど想像もできない。
彼は妻が自分に優しいことを期待する。しかし自分が妻に優しくしようとは思わない。
自分は妻にわがまま放題であることを願う。しかし妻のわがままは許さない。
自分は妻を傷つけることを平気で言う。
しかし自分の言葉に妻が傷つくことすら考えない。
しかし妻が自分を傷つけるようなことを言ったら、決して許さない。
普通の女性であれば、このような夫には耐えられない。
夫に優しくするが、同時に夫に優しさを求める。
そこで夫は妻に不満になる。
夫は一方的に身勝手な要求をしているのであるから、
その要求はどこかで通らないことになる。
するとその女性を憎む。その女性の方が客観的には
正当なのであるが、夫は妻が不当であると感じる。
公平な取り扱いを不公平と感じるのは神経症者の特徴である。
親をありのままに評価できない不安神経症者は、対人関係一般に
おいて葛藤に苦しむことになる。
現実をこうあって欲しいという期待にすりかえてみても、
心の底でちゃんと現実を見ているのである。
その現実があまりにも自分にとって辛いから、
その現実から眼をそむけてみても、心の底にはその現実の像は残っている。