苦しみは複利で増えていく

向上心からの努力は人を救うが、不安からの努力は人をさらに不安にする。
神経症的に欲張る人は不安なのである。

努力していても、それは向上心からの努力ではない。
不安を動機とした努力である。

したがって、努力すれば努力するほど不安になる。
現実の苦しみを脱却しようとする努力が、
かえってその人を窮地に追い込んでしまう。

それは、その人が苦しみの原因を間違えたからである。
神経症的な苦しみは、経済的困難など現実の困難とは別の苦しみである。

神経症的苦しみとは何か?
その人が苦しめば苦しむほど弱くなる。

現実の苦しみとは、苦しめば苦しむほど、人間的には強くなる。
鍛えられる。

人は、長い間神経症的苦しみを苦しみ、どんどん弱くなる。

これだけ苦しんだのだから、もう怖いものなどないと言えるかというと
逆なのである。いよいよ生きることが怖くなる。心の動揺は激しくなる。

これだけ苦しんだのだから、神様は許してくれるだろうと思うと
逆なのである。だからこそ苦しみ抜いて最後はうつ病になったり
自殺する人まで出るのである。

不幸は複利で増えていく。
それは神経症的苦しみについて言えることである。