子供は親と遊ぶことで、人との距離感がわかるようになる
父親が忙しい人であったとする。
子供が休日に遊ぼうとすると、父親あるいは母親から
「お父さんは、疲れているからあっちへ行ってなさい」と言われる。
あるいは父親がゲームをしている。新聞を読んでいる。
話しかけると「静かにしてくれ」と言われる。
だから子供は父親に「遊ぼう」とは言えない。
「遊ぼう」と言ったら、親の迷惑になると思ってしまう。
しかし「お父さんは忙しいから」は父親の防衛である。
実は父親は遊びたくない。
あるいは子供に「自分は偉い存在である」と見せたい。
このような父親は、子供との関係で自分が傷つかないようにするのに
精一杯である。
とても子供に何かを教える能力はない。
こうした親子関係で育つと、子供は自分に自信を失い、友達を作れない。
子供のうちからいつも相手の事情を考えるから、気軽に友達に
「遊ぼう」と言えない。
こうして育つと、心のふれ方の感覚がわからない。
人間の距離感がつかめなくなる。
そうして、子供は人との心のふれ方の原点がわからない人間になる。
単に立派な両親と一緒に家族旅行に行ったからといって
心のふれ方がわかるのではない。
子供が旅行のあとで、権威主義者の父親に「あの旅行は楽しかった」と
言ったとしても、心がふれ合っているのではない。
子供は親と遊ぶことで、人との距離感がわかるようになる。
育つ環境が違うから、子供の中でも人に「遊ぼう」と言える子供と
言えない子供がいる。
しかし「近づくな!」というメッセージを小さい頃に与えられると、
どの子も相手との距離感がつかめなくなる。
大人になって他人に接するとき、迷惑にならないかとビクビクしている人は
子供のときにうるさがられた怯えを再体験しているのである。
今、大人になって、人とどうしても親しくなれない人は、
小さい頃、自分はどんな気持ちで人と接していたかをもう一度
思い返してみることである。
そして今、何十年も前のその気持ちを引きずって生きているのではないかと
反省をしてみることである。