幸せにはなれないパーソナリティー

ある男性が詐欺に遭った。
その後、彼は毎日毎日、その損をしたお金の額のことを考えていた。

彼は普通の生活ができる幸せには注意を向けなかった。
仕事の充実も、彼には関係なくなってしまった。

そのうち彼は健康を害した。仕事を続けられなくなった。
そして悲惨な結末を迎えた。

彼は詐欺に遭ったから不幸になり、病気になり、挫折したと周りの人は言う。
しかしそれよりも、実は親との関係で抱えていた心の葛藤で挫折したと
解釈したほうが正しいだろう。

詐欺に遭わなくても彼は不幸だった。詐欺は、挫折の単なるキッカケである。

彼は幼い頃から父親にいじめられていた。
それにもかかわらず、父親への依存からぬけきれずに、自分の父親は素晴らしいと思っていた。

彼は無意識で、父親のいじめに対する憎しみを持っていた。
そして依存心が強いので、憎しみを抱いていることへの父親からの処罰を恐れていた。

「親をよく思いたい」というのは、人間の基本的な欲求である。
そこで意識では「私の父親は立派な父親です」と思っている。

しかし無意識では、父親を憎んでいる。この意識と無意識の乖離が彼の不幸の源である。

「父親と顔を合わすのは嫌だ」と言うが、本当は、「父親に愛されたい。立派な息子と思われたい」

もともとベースにこういう心の葛藤があったので、幸せにはなれないパーソナリティーであった。

彼が、自分のこの心理過程を意識化できないままで、
誰かに「もっと楽天的になりなさい」と言われても楽天的になることは無理である。