自分の限界を無視して、あたかも理想の人間であるかのごとく振舞う
もし零細企業が、大企業と同じ巨大なプロジェクトを実行しようとしたら、
どうなるであろうか?
もし中小企業が大企業と同じ売上高を目標にして行動したら
どうなるであろうか? できるはずがない。
しかし神経症的な人は、これと同じことをしようとしているのである。
実際の自分を無視して理想的な自画像に固執するということは、
中小企業が大企業と売上高を同じにしようとしているのに等しい。
神経症的な人のエネルギーは自己実現ではなく、理想化された自分を
実現しようとすることに向くという。
これがまさに企業でいえば、中小企業が巨大企業と同じことを
実現しようとしているということである。
中小企業にとって、長期目標としてそのような目標を立てることが
必要なときもあるだろう。しかし長期の戦略としてではなく、
いま現在そのようにして計画を実行するなら、倒産するに違いない。
神経症的な人は、企業でいえば、このように倒産した企業なのである。
中小企業には中小企業の限界がある。
その限界を経営の責任者がよく認識し、受け入れていない限り、
その企業は倒産する。
その限界を知った上で値段を設定する。その値段で売れるものをつくる。
その限界を克服しようとして企業努力することはいい。
しかしその限界を受け入れないで経営したら、その会社は倒産する。
宣伝力も違う、イメージも違う、信用も違う、銀行から借りるお金の利子も違う。
そのような違いを受け入れた上で製品をつくってこそ、その製品は
世の中に受け入れられる。製品が受け入れられなければ倒産するしかない。
神経症的な人は自分の限界を無視して、あたかも理想の人間であるかの
ごとく振舞うという。それは恐ろしいことなのである。
普通の経営者なら怖くてそんなことはとてもできない。