足を引っ張られることは覚悟しなければならない

人は「あの人に足を引っ張られたからあの仕事ができなかった」と
いうことがある。その言い方は半分正しいが半分は間違っている。

半分正しいというのは確かにその人が足を引っ張らなければその仕事はできたからである。

もちろん、もともとその人の能力ではできない仕事で、独りよがりに
他人に足を引っ張られたからできなかったと思っているのは問題外である。
現実にはこのようなケースが多い。

半分間違っているというのは、もともと仕事というのは日本のような組織の
中では人から足を引っ張られるのが当たり前と思わなければならないからである。

足を引っ張る人がいないというのは好運すぎるくらい好運なことで、
そんなことをいつも期待できるほど仕事というのは甘くない。

仕事ができるというのは、自分の足を引っ張る人がいたにもかかわらず
その障害を乗り越えて仕事を成し遂げられたということである。

組織の中には神経症的競争心を持つ人が多い。
神経症的競争心とは他人に打ち勝つことが目的で、自分が成功することが
第一の目的ではない。彼らには自分が成功することより相手が失敗することのほうが重大なのである。

したがって、会社の中で自分が大きな仕事をすることに最大の関心があるのではなく、
他人が仕事でつまずくことが彼らの最も重要な関心ということになる。

人の足を引っ張る前に自分の仕事をすればいいのにと思うが、それができない。
本来自分のするべき仕事をほったらかしにして、他人がする有意義な仕事を潰す
ことにエネルギーを使う。

仕事をするということは、人の足を引っ張ることにしか、エネルギーを
使えなくなったような人がたくさんいる組織の中で仕事をするということである。