仕事ができる人は自分が今何をできるかを考える

神経症的な人が企業でなかなか実績をあげられないのは、柔軟性の欠如による。
相手との交渉でも、神経症的な人はいかに自分が正しいかということばかり主張する。

つまり、自分の正しさを主張して、自分を守ることばかりに気をつかう。
自分の正しさを主張することが、相手のメンツを結果として傷つけるということなど考えない。

あるいは自分がいかに正しいかを主張することが、相手の不利益に
つながるかなどということも全く考えられない。

したがって、周囲の者を自分の味方にして、交渉を有利に導くなどということはできない。
企業の中で交渉を有利に導きながら仕事の実績を上げるような人は、
自分の正しさを強調することばかりに気をとられている人ではなく、
何が相手にとって魅力あるかを考える人である。

そして相手にとって有利なことで、自分が今できることは何かを考えられる人である。
自分はこんなに素晴らしいのだぞ、ということを誇示することにばかり気を
奪われているような神経症的自尊心の持ち主に、企業の中で仕事はできない。

しかし、これも非現実的なほど高い期待と同じで、なかなか改められない。
頭では理解できたとしても、自分はこんなに素晴らしいのだぞということを
誇示することは、心の葛藤を解決するための手段であるからである。

つまり彼は、自分はこんなに素晴らしいのだぞと人に誇示することで、
味うことを避けようとする重大な感情がある。

その感情を味わうことを避けるための行為が、自分の素晴らしさの誇示なのである。
したがって頭ではそのような誇示が仲間を造反させ、交渉を進める上で
マイナスになると分かっていても、ついつい誇示してしまう。

これでは企業の中で大きな仕事はできない。
彼にとって今もっとも重要なのは、心の葛藤を解決することで、仕事をすることではない。
「あいつは本気ではない」というのは、そのような人を表現している言葉である。

つまり本気で仕事を完成させようとするよりも、周囲の人にちやほやされることの
ほうが目的となるからである。

周囲の人に騒がれることで自己満足する。
本気で苦しく長い努力を積み上げていくだけの気力、忍耐力はない。