決して失敗は悪いものではない

成功が続くと、心の硬直が生じ易くなる。
だいたい、やることなすことうまくいっていれば、反省する機会はなくなる。

成功が続いている実業家に、得意になるなと言うほうが無理である。
そして、得意になって自分を見つめる機会がなくなれば、悲劇的な
崩壊が待っている。

すべての分野における成功は、悲劇的な結末に向かって
進んでいるのではないだろうか。

飛ぶ鳥を落とす勢いのある政治家が逮捕されたり、
飛躍的に発展する企業の社長が年をとってから逮捕されることがある。

年をとってから逮捕されることは、若い人には想像を超える
悲劇的な体験である。

彼らは有能であるがゆえにやりすぎたのである。
やりすぎることの原因は、連続した成功である。

途中で何かにつまずいていれば、そこまではしなかったであろう。
一病息災というが、企業の成功も同じである。

どこか体が悪いからかえって体を大切にする。
それと同じで、どこかに失敗があってこそ経営者の気持ちも
引き締まるし、慢心に陥らない。

その企業が取り組む事すべてがうまくいったら経営者に、
慢心するなと言うほうが無理である。
またそんなことを忠告しても聞き入れてもらえるものではないだろう。

決して失敗は悪いものではない。
失敗こそ悲劇から自分を救ってくれているものかもしれない。

もし自分がやることなすこと成功していたら、きっと慢心するであろう。
世の中や人生を甘く見て、年をとってから悲痛な体験をするのではないだろうか。