実際の自分の実力や限界が見えていなければ不満は生じる

もし零細企業が大企業と同じ巨大なプロジェクトを実行しようとしたら、どうなるであろうか。
もし小企業が大企業と同じ売上高を目的にして行動したらどうなるであろうか。
できるはずがない。

しかし神経症的な人は、これと同じことをしようとしているのである。
実際の自分を無視して理想的な自画像に固執するということは、
小企業が大企業と売上高を同じにしようとしているに等しい。

中小企業にとって、長期目標として大企業のような目標を立てることが
必要なときもあるだろう。しかし長期の戦略としてではなく、
いま現在そのようにして計画を実行するなら、倒産するに違いない。

神経症者は、企業でいえば、このようにして倒産した企業なのである。

ある人がある人生を生きる。そしてその人生は最高であると、その人は思う。
それは、自分にとってはこの人生がもっとも価値あるということなのである。

神経症者は「実際の自分にとって」ということを考慮しないで考えるからおかしくなる。
一般的にもっとも価値ある人生というのが、あらかじめあるわけではない。

企業が製品をつくるときはこの姿勢である。一般的にいいものというのがあるわけではない。
わが社にとっては、この製品をつくることが最も望ましいということである。

なんとなくいつも周囲に不満という人は、よく見るとやはり「実際の自分にとって」という視点が抜けている。

実際の自分の実力とか、限界を無視して世の中を見ている。
不満な人はたいてい、自分が考えるほど実際の自分には実力がない。

実際の自分の実力や限界が見えていなければ、会社の自分への態度に不満になるだろう。

また実際の自分の会社の実力や限界が見えていなければ、世の中全体に不満になるであろう。
そして実際の自分にとって何が価値あるかという視点が抜けているから
一般的に価値あるという人生を生きようとする。背伸びをする。

努力が実らない。空回りする。するといよいよ世の中に不満になる。