言葉を額面通りにとってはいけない
神経症者は言葉に弱い。
極端に言えば、相手が「あなたを愛しています」と言うと、
相手は自分を「愛している」と思ってしまう。
相手が「私はこんなに親切な人間です」と言うと、
相手を「親切な人」と思ってしまう。
相手の態度や行動や顔を見ていない。相手が実際に何をしたかを見ていない。
ビジネスマンが会議で「私はこんなに熱心に仕事をしています」
と言うと、その人を仕事熱心な人と思ってしまう。
そういう立派なことを言うビジネスマンが、会議以外のところで
実際には何をしているかということを見ていない。
「熱心に仕事をしています」と言いながらも、
実際にしていることは無責任きわまりないビジネスマンはたくさんいる。
それを見抜けないのが神経症者である。
だから神経症者は、口先だけのおかしな人ばかりに囲まれることになる。
神経症者は、親切でない人を親切な人と思うから、人生がおかしくなってくる。
神経症者は、善良でない人を善良な人と思うから、人生がおかしくなってくる。
神経症者は、「僕は君の友達だ」と言う相手を、自分の友達だと思ってしまう。
相手が自分に何をしているかということを観察しない。
神経症者は言葉に弱いから、人生に躓くのである。
そしてもう一つ大切なことがある。
それは神経症者のとんだ勘違いである。
神経症者は自分が言葉に弱いから、相手も言葉に弱いと思っている。
つまり自分が「私は有能です」と言うと、相手は自分を有能な人と思ってくれたと思う。
しかし多くの場合、相手は言葉で神経症者を判断していない。
「私は有能です」と言うときの神経症者の落ち着きのない目を見ているかもしれない。
あるいはそれを言うときの不自然な笑いを見ているかもしれない。