他人の成功は不安を刺激する

他人に優越することで、自分の心の不安を解決しようとした人にとって
他人の恵まれた点は許し難い。
つまり他人の恵まれた点が神経症者の不安を刺激するのである。

不安でない人は他人の恵まれた点や、優れた点に接しても、何も刺激されない。
従って意識がその点に集中しない。

他人に優越することで心の不安を解決しようとした人は、どうしても他人が気になる。
他人の成功は、その人の不安を刺激する。

他人の成功は、その人の不安解消の方法を妨害する。
従って、他人の成功はその人を不安にし、怒りを感じさせる。

他人の成功ほどその人にとっておもしろくないものはない。
自分の不安を刺激した他人の成功は、その人に怒りを感じさせる。

しかしその怒りは、あまり意識されない。
怒りを感じているということを認めることをその人は拒む。

怒りを感じながら、怒りを感じていることを認めない時に人は不快になる。
他人の成功に拍手を送るのが寛大でできた人間とされているので、
人はなかなか他人の成功に怒りを感じても、それを認めることはできない。
そして一人で何となく不愉快になる。

逆に成功した人のスキャンダルは、愉快なのである。
それは、他人に優越することで不安を解消しようとして失敗した人の
復讐心を満足させるからである。

成功した人のスキャンダルは、不安解消の役に立つ。
だからこそ人は、成功者のスキャンダルに強い関心を持つ。

また成功者が何か不正と見られるようなことをすると、実際には不正を働いていなくても
寄ってたかって不正をしたことに仕立てあげてしまい、憎しみで糾弾を始める。

正義の名のもとに、あれほど激しく糾弾するのは復讐心からである。