その場その場で賞賛を追い求めてしまう
子育ての原点は、子供を育てるというよりも子供を可愛いと思うことである。
子供は可愛いと思われるから心理的に成長できる。
それなのに、うつ病になるような人は、誰からも可愛いと思われないで育った。
周囲の人は、その人を将棋の駒を動かすように働かせた。
それは、家でも会社でも同じである。
周囲の人は、その人を自由に動かせる心地よさを味わっていたのである。
うつ病になるような人は、そうした人間関係の中で心理的に
成長することができなかった。幼児的願望が心の底に残った。
幼児的願望は、幼児期に満たそうとする限り、社会的に問題を起こさない。
幼児が幼児的願望を満たそうとわがままを言うのは当たり前だ、と
周囲の人が思っているからである。
しかし、大人になってそれを満たそうとすると、社会的に破綻することが多い。
幼児は待てない。したがって幼児的願望が満たされていない大人は
時間をかけて何かを達成することができない。
もし遊びたい気持ちを抑えて頑張って努力しても、その努力の成果を今見たい。
その努力が先々の人生で表われてくるというのではダメである。
将来その努力が表われてくると思って、待つことはできない。
だから、もし努力したとすれば、今すぐ賞賛が欲しい、となる。
しかし、その場の賞賛を得ても、長い人生の軌道を狂わせてしまう。
世の中には、その場で賞賛を得られても、その行為をすることが
将来にマイナスになるということがたくさんある。
その場で賞賛を得られても、周囲の人の恨みをかって将来は
たいへんなことになるということがある。
でも幼児的願望を満たそうとする人は、それを我慢できない。
その場でその賞賛を得るほうを選んでしまう。
人間社会では、最後には地に足のついた生き方が人に幸せをもたらすのだが
幼児的願望の満たされていない人は、それができない。
遊びたい気持ちを抑えて真面目に働いた人も、「時を待つ」ことが
できなければ、最後には社会的に破綻する。
社会的に破綻するとは、アルコール依存症になるとか、犯罪に手を染めるとか、
無気力になるとか、うつ病になるとか、家族を養えなくなるとか、
自分に相応しい仕事ができなくなるとか、子育てに失敗するとか、
仲間と折り合いが上手くいかなくなるとか、社会の中で生きていく能力を失い
生活が破綻することなどである。