大切なのは親だけである

何度恋愛しても恋人を大切にしない

自分の弱点を過大視して、自分のその弱点にばかり注意を払っている人は、
いったんその弱点を克服できたかに感じると、とたんに尊大になり、
すべての人に尊敬を要求する。
今までとは逆に、他人に接してやるという尊大な態度になる。

自分の弱点を過大視して、いつもビクビクしている人も、逆に尊大な人も、
自分中心に地球が回っている人である。
いずれも他人の心に触れることができていない人である。

つまり、ある弱点を克服できて尊大になる人は、相手はその弱点を問題にしていない
ということ、それ故、その弱点をカバーするような何かを達成したという
こともそれほど問題にしていないということが想像できないのである。

その弱点をカバーするような何かを達成してくれることを、
恋人は望んでいないのである。

だから、その弱点をカバーしたからといって、恋人には彼が急に理想的な
男性になったとは思えない。

ところが、彼のほうは、自分は理想的な男性であることを誇示しはじめる。
むしろそれによって彼は恋人を失うかもしれない。

彼のような人間は、何度恋愛しても恋人を大切にしないし、恋人の心に触れない。
大切なのは親だけである。彼にとって、親の期待以外のものは存在しない。

感受性の豊かな恋人なら、それにすぐ気がつくであろう。
そして、そのことを淋しいと感じるに違いない。
お互いの心が触れあっていないということが分かる。

しかし、彼のほうには、お互いの心が触れあっていないということ自体が分からない。
この世の中には、恋人として、友人として、ビジネスマンとして生きることなく、
ただ息子として、娘としてのみ生きた人は多い。