おだてにのるのは自分にも欠陥がある

もし部下が有名大学でも出ていれば、「さすがに~大学出は違う」などと
おだてて操作しようとしている人間は、いったん部下が困った時には絶対に助けない。

他人を全て操作の対象としてしまう人は、もともと他人を援助しようという
欲求そのものがないのである。

適当におだてられて、その上司に尽くせるだけ尽くしてボロボロになっても、
その上司は決して困った時には助けてくれない。

困って助けを求めに行った時、唖然とするに違いない。
それまでのニコニコした笑顔は全くなく、逆に「君のためにひどい迷惑をした」
というような渋い顔をして睨みつけるかもしれない。

その時呆然としてももう遅い。
これだけ人にやらせておいて、その上「迷惑をしているとは何事だ!」と
発狂しそうに口惜しがっても、もう後の祭りである。

むしろ、そんな適当なお世辞に乗ってその上司に献身した自分の欠陥を反省すべきであろう。
自分は頭がいい、などとつまらない優越感をもっていなければ、うまく操作されて利用
されなかったのである。

あるいは自分は頭が悪いというつまらぬ劣等感に苦しんでいなければ、
「君は頭がいい」などという誠意のない言葉を聞いても嬉しくなかったのである。

馬鹿馬鹿しい劣等感などをもっているからこそ、上司に操作されるのである。
大学によって人を見るような歪んだ価値観をもっているから操作されるのである。

ずるい人間というのは、弱い人間を見抜く。しかし強い人間を見抜けない。
それは弱い人というのは、ある欲望がアンバランスに強いからである。
人が弱くなればなるほど、その欲望は強くなる。

出世がしたい、尊敬されたい、お金がほしい、結婚したいなどなんでもよい、
ある欲望が異常に強いから人は騙されるのであろう。

結婚詐欺にあうのは、結婚したい、結婚したいとそればかり考えている人である。
その欲望が全人格の中であまりにも大きくなって分離し、その欲望によって
その人が支配されている時、人は簡単に騙される。

ある一つの欲望があまりに大きくなって、人格全体のバランスが崩れて人は神経症になる。
そう考えると操作する人も不幸であるが、操作される人もまた心理的に問題のある人なのである。

自分が長年にわたって操作され続けてきたと気づいた時は、
口惜しくて発狂するよりも自分の心の欠陥を反省しなければならない。