弱い人として今を生きれば、トラブルは避けられない

今の体験の心理的枠組みをつくったのは、その人の成長期の体験である。
昔々の話である。その昔々の体験が生涯にわたって影響する。

だから、現在の体験がどんなに恵まれていても不満である。
どんなに素晴らしい人に囲まれていても、怒りを感じている。

要するに、恵まれた環境にいながら欲求不満の塊の人は、
現在に生きているのではなく、過去に生きているのである。

周囲の世界は変わったが、その人の心は変わっていない。
人の心は「過去」と「想像」に影響される。

しかし本人は「現在」と「現実」の中で生きていると錯覚している。
だから人間関係のトラブルは絶えないのである。

支配的な親の期待と衝動に沿って成長した者は、自己実現できていない。
そして自己実現できないことの怒りは、人々の想像を超える根強いものがある。

しかも自己実現していないことからくる憎しみは、
漠然としているが故にきわめて意識しにくいものである。

例えば人への憎しみなどは、無意識のメカニズムを
理解すると意識化しやすい。

人から虐待されたとか、侮辱されたとかいう直接の行動に対する憎しみは、
いったん無意識に追いやられたとしても意識化しやすい。

自己実現できなかったことに対する怒りは、無意識に追いやられたままで、
長くその人への影響を保持し続ける。

大人になってからの日常生活でも、無意識にあるものが
心理的に普通の人を支配者にしてしまう。

例えば妻の許しを得なければ何もできない夫のような人である。
妻に昔の支配的な親と同じ役割を持たせてしまう。

この過去の支配の中で、弱い人として今を生きれば、トラブルは避けられない。