憎しみをどう乗り越えるか

どうしても自分を傷つけた人から、先にすすめない人がいる。
そういう人は、残念ながら死ぬまで不幸である。

これはどうしようもない。その人の不満は環境で解決できるものではない。

ある人を「乗り越える」とは、その人に対する憎しみを消せた、ということである。
自分を傷つけた人を本当に「乗り越えた」というのは、
その人への憎しみを自分の中から消せたということである。

心理学の本などでは「過去に釘付けされる」とか表現がなされる。
要するに、自分を傷つけた人との関係からどうしても抜けられない、ということである。

その人との関係がすべてになってしまう、ということである。
どんな素晴らしい人が愛を囁いても、自分を傷つけたその人のことが
心を占めていれば、もう他人の入り込む余地はない。

自分を傷つけた人との関係を終わらせる。それで人生はすっかり違ってくる。

人が生まれ変わるとは、そういうことである。
自分を傷つけた人といつまでも心理的にかかわっていれば、人は心理的に成長できない。

いつまでも憎んでいては、どんなに努力しても人は変わらない。
どんなに成功しても人は変わらない。

この点に関してだけ言えば、努力はなんの意味もない。
成功しても不満たらたらな人がいるのはこのためである。

心の底の憎しみを消すということは、莫大な物を与えられても不満な人から、
わずかな物を授けられても満足する人に変わる、ということである。

いつもイライラしている人から、心穏やかな人に変わるということである。
もちろん、その人がどのくらい傷つけられたかによって憎しみの大きさは違う。

とてつもなく憎しみの大きい人もいるだろう。
だが、それを乗り越えた時には、それだけの大きなものがその人には与えられる。
生きるとはそういうことなのである。

幸にして、たいした努力もなしに幸せな人生を送れる人もいる。
それはその人の運命である。それはそれでいい。

しかし、すべての人がそのような星のもとに生まれているのではない。
自分の運命は自分が引き受けるより他に仕方がない。