心の底で憎んでいるからこそ離れられない

嫌われる人というのは、心の底で自信がないのに自信のあるフリをする人であろう。
一口で言えば、虚勢を張って生きている人である。

虚勢を張るというのは、まだ子供の頃の甘えの欲求が満たされていない人である。
他人の注目を集めたい人であり、他人から特別に扱ってもらいたくて
しかたのない人なのである。

虚勢を張っている人が成長するのに本当に必要な人というのは、
「あなたはそんなに虚勢を張らなくても、ありのままの姿で
十分に魅力的ですよ」と言って、その人を受け入れてくれる人である。

しかし、虚勢を張っている人は、むしろそうした人を避ける。
虚勢を張っている者同士で結びつくことがある。

そんな場合、お互いに傷つけ合っているところがある。
しかし、お互いに自分の虚栄心を満たすところがあるので、
心の底のどこかで憎み合いながらも、関係を続ける。

お互いの心の底の底ではウソをつき合っていることが分かっている。
しかし、それを敢えて意識しない。

自分の情緒の成熟にとって本当に必要な人を見分けることは難しい。
だからこそ、人は時に自分を傷つける人を友人にしたり、恋人にしたりする。

自分が心の底で嫌いな人を、意識の上で好きになっている人は多い。
ちょうど親に十分愛されなかった人が、いつまでも親から
離れられないようなものである。

人間の心理は複雑で、その人を心の底で憎んでいるから
別れられるなどというものではない。

心の底で憎んでいるからこそ、別れられないということもある。