素直になれない
恩着せがましい親に育てられると、対人的に素直になるよりも、
逆に自分の価値を相手に印象づけようとするようになる。
相手の好意に「君のおかげで助かった」と素直に言えば、
昔の悪夢が再現されてくるような恐怖に襲われる。
そこで相手に感謝することに不安を感じてくる。
恩着せがましい親というのは、子供に対して「自分は価値のない人間だ」
と感じることを強要してくるのである。
親子の関係において親の側の恩恵を一方的に売り込むから、
子供はどうしても自己無価値観に悩む。
だから相手に自分が価値あると認めてもらおうとして、
相手に自分の価値を印象づけようとする。
自分に価値がないと悩めば悩むほど他人に自分の価値を売り込む。
おまえのためにこんなに苦労してやっているのだ、と主張する
ことによって親は自分の価値を感じようとしているのである。
人間は自分の価値が脅かされると不安になる。
恩着せがましい親にとって、自分の心理的安定のために、
子供が「自分は価値のない人間だ」と感じることが必要なのである。
親の恩着せがましさは、子供にとっては屈辱感である。
恩着せがましい親に育てられた人間の行動の隠れたる動機はこの屈辱感である。
このような人間はなかなか他人と協力することができない。
従って企業の中でも困りものになってしまうだろう。
よく依怙地になる人がいる。そんな時周囲の者が、「そんなに意地を張るなよ」と
言っても聞き入れない。意地を張るのは、そこに隠れたる動機として屈辱感があるからだろう。
人間関係のうまくいかない人の中にも、この隠れたる屈辱感を持っている人がたくさんいる。
他人の好意を素直に受け入れられない。
また仕事などしていても、他人のすぐれた提案を受け入れられない。
その提案を受け入れることが自分の心の底にある屈辱感を刺激するからである。
人は自己無価値観に悩めば悩むほど、自分の価値を人に認めてもらおうとする。