気配りも仕事の一つである
企業の中で仕事をするということが大変なことは、
実際に仕事をした人ならわかる。年をとることはその難しさがわかるということなのである。
年をとるにつれて、いろいろの能力を失う。体力も失うし、記憶力も失う。
それにもかかわらずやはり年をある程度とった人でなければ、
なかなか人の上に立てないというのは、若いうちにはその仕事の難しさがわからないからである。
単に能力があるというだけでは仕事はできない。
あの人の顔を立てなければいけない、あの人のメンツを潰してはいけない、
そこらへんの気配りが若いうちにはなかなかできないのである。
会社の中である人の顔を立てなければならないということは、
外との関係で必ずしも有利なことにはならない。
つまり社内のある人の顔を立てるために、社外との関係で
仕事をしていくうえでは負担が重くなるということである。
自分の能力にだけ注目している若い人は、どんなに頭がよくて体力があっても仕事はできない。
結局この組織はみんなの力で持っているのだということが
わかるまでは、企業のなかで仕事はできない。
企業の中で仕事をしていくのと小説家が小説を書くのとは違う。
若くて有能でありながら企業のなかで仕事ができない人は、
画家が絵を描くことと自分の仕事を同じように考えているのである。