偽りの自分で生きたのが、あまりにも長かった

うつ病になるような人には驚くほど様々な勘違いがある。
必死になっているのだが、やっていることがことごとく逆効果をもたらしてしまう。

「苦しい、辛い」と嘆くのは、ひと口で言えば
「私をもっと愛してください、もっと慰めてください」という意味である。

ということは、うつ病になるような人は、幼い頃から自分の本当の気持ちを
誰にも汲み取ってもらえなかったということである。

「私はあなたたちとは違って、桁違いの苦しみを味わっているのです」
という自分の気持ちを誰も汲み取ってくれない。

だから、関心が自分の外にいかない。
注意は「私の気持ちを分かって」ということだけに向いてしまう。

多くの人は、うつ病になるような人に趣味を持つことを勧める。
勧めることは簡単だが、自分の心の葛藤にとらわれている人が、
趣味を持てる人間になることは極めて難しい。

それはうつ病者が自己疎外された人間でなくなることであり、
他者に対する興味と関心を持てる人間になることであるから。

うつ病になった人は好きなことをしてこなかった。
というよりも、好きなことをしてこなかったという感覚そのものがない。

そこでうつ病になるような人は、自分のどこに問題があるのかが理解できない。
つまり「なぜ自分がうつ病になったのか?」が理解できない。

偽りの自分で生きたのが、あまりにも長かった。
自分を押さえ込む重しがあまりにも重かったのである。