自分の欲求からすべて眼をそらしている
抑圧の強い人は集中できない。集中力は抑圧の強さと反比例する。
抑圧とは、自分が本当に感じていることを自分に隠していることである。
自分の心の底では、人生を無意味に感じ、毎日が楽しくない。
それなのに他人への競争意識や劣等感、親への幼稚な忠誠心などから、
いかにも人生を意味あるものに感じているかのように装ったりしているのが
抑圧である。
本当はつまらないのに、自分で自分に、楽しい、楽しいと言い続けて
いるような人が、このタイプである。
心の底では仕事が嫌いだ。心の底では運動も好きではない。
心の底では家事もそんなにやりたくない。心の底では無気力である。
心の底には人生に対する無意味感がべっとりとくっついている。
それなのに、競争意識や劣等感から、それらのことがいかにも意味ある
もののように意志の力で意識する。
そんな生活をしている者が、どうしてあることに集中できようか。
嫌いなことは嫌い。楽しくないことは楽しくない。
それを自分に一度はっきりさせることであろう。
自分の汚い欲望ーあいつを殴りたい、あの人を蹴飛ばしたい、
あの人とセックスがしたい、お金が欲しいーを、はっきりと
自分の眼の前に突き付けることである。
うつ病になりやすい人は、規範意識が過剰である。
自分の欲求からすべて眼をそらしている。つまり抑圧が強い。
従って、何に対しても自分が一体となって感情を集中できない。
このように仕事はすべきである、という意識から仕事に携わっているが、
心の底はその意識と全く逆である。
集中するとは、無意識と意識とが同じである時、生じるものであろう。
抑圧の強い人は、この意識と無意識が完全に逆方向を向いているのだから、
物事に集中できるわけがない。
自分を偽ってしまった者は、集中できない。
集中しよう、集中しようとするだけで、決して集中することはできないであろう。