自己概念の安定している人は、そんなに不安な緊張を感じるものではない
他人の評価を最も気にするタイプというのは、どのような人であろうか?
それは、自分が望むほど自分のことを他人が評価してくれないと思っている人である。
無意識下では低い自己評価かもしれないが、意識の上では高い自己評価を
しようとしている。つまり、低い自己評価を抑圧している。
他人からも当然のことながら高い評価を望んでいる。
ところが、自分の望むような高い評価が他人から得られない。むしろ低い評価である。
本人の無意識下の自己評価と、他人からの評価は案外一致している。
こんな人が他人の言動に敏感なのである。
いずれにしろ、自分の望むほど自分のことを他人が評価してくれていないと感じている人、
こんな人が最も他人の評判を気にする。
また他人が自分をどう評価しているか、ということについて敏感に反応する。
意識の上での自己評価と、他人からの評価の不一致、これは本人に不安な緊張をもたらす。
引っ込み思案で口下手だという人がいる。
話すことが下手だから、友達と話していてもいつも緊張するという。
このような人も、実は本心、心から、自分は話すことが下手だと思っているか
どうかは疑問である。
おそらく本当は、自分はもっと上手に話せるはずだ、と心の底で
思っているのではないだろうか。
さらにできれば、友達から話が上手だと評価してもらいたいと思い、
話下手だと他人が評価することがやはり面白くないのである。
この人が友達と話す時、不安な緊張を感じるのは、実はこのように自己のイメージが
不安定だからである。自己のイメージ、つまり自分がどういう人間であるかという
ことが不安定だからである。
自己概念の安定している人は、そんなに不安な緊張を感じるものではない。
自分は話すことは得意だし、他人も話し上手だと評価している。
あるいは自分は話すことが得意でないし、他人もそう評価している。
こんな人は、友達と話す時、不安な緊張にさらされることは少ないであろう。
この人は「話すことが下手だから、友達と話していても、いつも緊張する」と
言うが、実は話すことが下手だから緊張しているわけではない。
もし、この人の言う通りであれば、話すことの下手な人は、皆友達と話す時、
緊張していなければならなくなる。話すことが下手でも、友達と話すことを楽しんでいる人もいるのである。