独りよがりの思い込みは破綻を招く
ある女性は「自分の胸が小さい」という劣等感があった。
それを気にしていた。できればそれを恋人に隠しておきたかった。
彼女にしてみれば、恋人のことが好きだからこそ、なおのこと隠しておきたかった。
しかし、なかなかうまく隠せそうもない状況になってきた。
彼女はそこで、自分を守るために知的な女性ということを誇示しはじめた。
「胸が大きいのは知的な女性ではない」という価値観が彼女にはある。
彼女は事前に防衛的になった。
彼女はことあるごとに、「女性は知的でなければならない」ということを主張しはじめた。
そして他の女性を「あの人は知的ではない」とけなしはじめた。
彼女は次第にそれを男性にもエスカレートさせていった。
知的でない男性は魅力がないと主張しはじめた。
そして彼女は不安から、「あなたは女心をわかっていない」と、
いつも恋人に絡み始めた。素直でなくなったのである。何となく全体にしつこくなった。
男性のほうは次第に嫌気が差してくる。するとそれが彼女の不安をさらにかき立てる。
彼女の明るい性質が消えていく。彼女のイヤな面ばかりが前面に出てくる。
男性のほうはべつに、女性の価値として胸の大きさを基準にしていなかった。
彼女が何も隠さなければ、うまくいった恋愛であろう。
しかし彼女は自分の弱点を自分が勝手に屈辱的に解釈し、
勝手に相手の男性を推測し、そしてすねて、恋愛関係をこじらせた。
彼女がこの恋愛を壊した。しかし彼女は相手の男性を誠意がないと解釈し、
自分は捨てられたと思い込んだ。
そして、心の底では「恋愛において胸の大きさは重要だ」と一人で勝手に思い込んだ。
その思い込みを、失恋のたびに強くしていったのである。
現実にコミットしない独りよがりの想像の世界で、彼女は生きていた。
劣等感の強い人は、他人に理想の自分を見せようとする。
しかもその理想の自分というのは、あくまでも自分が考える理想の自分である。
実際に相手が求める自分ではない。