相手の機嫌に自分の感情が支配される
他人が喜ぶことを自分の人生の喜びにしてしまった人は、自己喪失している。
正確に言えば、他人を喜ばすことによって他人の気を引くことを人生の
目的にしてしまった人は自己喪失している。
子供の喜ぶことを自分の人生の唯一の喜びにしてしまった親は、
最終的に子供を束縛する。
こういう親は肉体的に大人になっても心理的には成長できない子供を作り出す。
つまり「あなたさえ幸せならお母さんはどうなってもいい」というようなことを
言う母親である。
子供のために自分の人生を犠牲にするという母親の殉教的な姿勢が
子供を不幸にしていくのである。
夫の喜ぶことを自分の人生の喜びにしてしまった人は、夫を束縛する。
この種の自己喪失者の問題は、相手が喜ばなかった時に、
ものすごく不快になるということである。あるいはものすごく不満になる。
したがっていつも相手の機嫌に自分の感情が支配されてしまう。
結果としていつも相手に機嫌よくしていることを要求することになり、
相手にとってはきわめて大きな心理的負担となる。
自分の言いたいことが言えないで不満になる。相手も不満になる。
そして重苦しい雰囲気になる。
人は好きな人に対してもなお不服や不満や不平を持ち、文句を言いたくなる。
このことが自己喪失者や神経症者にはなかなか理解できない。
実は相手を信頼しているから相手に文句を言えるのである。
相手の機嫌が気になって言いたいことが言えない人というのは、相手を信じていない。
相手が自分のその時の言動に不満を感じると、相手との関係に危機感を抱く。
そして常に相手の自分に対する不満、不服に敏感になっている。
そして相手が自分に対して不満、不服にならないよう努力する。つまり自分を抑える。
しかし言いたいことを言わなかった不満は心の底に残る。
それ故に、相手の機嫌が気になって言いたいことが言えないという人は、
心理的に近い人と楽しい人生を送ることができない。
心理的に依存しながら、その人と楽しく生きることができないので、
いつも重苦しく塞ぎ込んでしまう。
このことが理解できないで多くの夫婦、親子が不機嫌に苦しんでいる。