行動の一つ一つが言い訳がましくなる
小さい頃、親から拒絶されて傷ついた人は、大人になって
信頼できる人と出会い、その人に愛されても、心のどこかで
見捨てられることを恐れている。
相手に心理的に依存しながら、相手から見捨てられることを恐れる。
相手にとって自分の存在が意味あるものと信じられないのである。
見捨てられることを恐れれば、相手に見捨てられないように行動しようとする。
どうしたら相手に気に入られるかと、そればかりを考えることになるだろう。
見捨てられる不安をもった人間は、どうしたら相手の愛情を失わないかと
いうことばかり考える。つまり、自分のことばかり考える。
行動の一つ一つが言い訳がましくなる。
対人恐怖症者のように、自分の何かが相手を傷つけることを恐れる。
自分のする行動の一つ一つについて、これは決して自分勝手な行動では
ないということを相手に伝えようとする。
ビジネスマンが酒の付き合いと仕事仕事と言うのには、そのにおいがする。
酒を飲んでも、決してそれは奥さんをほったらかしにして自分一人が
いい思いをしているのではなく、これは仕事なのだということであろう。
人間は不安になると自分のことだけしか考えなくなる。
不安になれば不安になるほど、自分の一つ一つの細かい行動まで、
気に入られるために、相手のためにやっていることだと伝えようとする。
一つ一つの行動まで、相手に気に入られようとしている不安な人は、
自分のことしか考えていないのに、自分ほど相手のことを考えている人は
いないと錯覚する。相手にはそれが分かる。したがって、相手は淋しい。
不安な人は、気に入られようとすればするほど、相手を遠ざけてしまう。
不安な人は、相手のことを考えてやるゆとりがない。
不安な人は、相手が今自分に何を望んでいるかについて、全くの錯覚がある。
不安な人は、小さい頃自分を拒否した人をモデルにして人間を考えている。
その自分を拒否した人に対して、どのように行動したら気に入られたかという
経験をもとにして、他人に相対するのである。