自分が何を望んでいるかも分からなくなる
うつ病者はたいてい成功しなければならないという重圧に苦しんでいた、という。
それは親からの期待である。親の期待を内面化して、自分も親の望む職業につき、
親の望む出世をしようとする。
自分の望みが、親の望みを内面化したにすぎないと本人は気がつかない。
父親自身が望むような出世ができず、劣等感を持っている。
そして子供の成功で、その父親自身の憎しみを晴らそうとしている。
子供は親の期待を内面化して、自分もそうありたいと願う。
確かにこれでは子供が自己喪失するだろう。
つまり自分が何を望んでいるかも分からなくなる。
しかしこれだけのことで成功への努力以外はすべて意味がないように感じるだろうか。
そうではあるまい。
もう一つの条件は、実は子供は父親と同じようには望んでいない、と
母親が気づいていないということである。
つまりせめて母親が子供の心を理解していれば、父親が子供に成功すること、
父親に従順であることを期待しても、子供はストレスから病んでいくことはないように思う。
父親は自分の望むような成功ができなかったので欲求不満になっている。
父親は生きている実感を失っている。それらのことのすべての解消を子供で行おうとしていると、
もし母親が分かっていたとする。
そして子供が父親に従順なのは父親を恐れているからである。
子供はもっとわがままに子供らしく生きたがっている、と子供の心を
母親が理解していたら、子供の自我は成長することができたのではないだろうか。
母親が「この子がわがままでないのは本心ではない」と子供の心を理解していたら、
子供は大人へむかって成熟していくことができたであろう。
ところが母親までが子供の心を理解してやれず、わが子が父親の言うままになるのを、
手がかからないなどと喜んでいる。
父親と一緒になってこの子はいい子だ、と言っている。そんな時、子供の心は歪んでいくのであろう。