神経症者はいつも急いでいる
神経症の特徴の一つとして急いでいるということがあげられる。
神経症者は、いつも何処へ行くのだが分からないが、急いでいる。
目的があって急いでいるというのは分かる。
電車の時間が間に合わなくなりそうで急いでいるというのは正常である。
しかし時間があるのに急いでいる人がいる。
家にお客さんが待っているから急いで家に帰るというのは正常である。
しかし家に早く帰らなければならない理由はないのに急いでいる人がいる。
ところで人はどのような時に急ぐであろうか。
昼間安全な場所を歩いている人と、夜危険な場所を歩いている人では
どちらが早く歩くであろうか。
昼間よく晴れた秋の日に買物に歩いて行く人はどうであろうか。
気分よくのんびり歩くのではないだろうか。
しかし夜、殺人事件のあった場所を通る時はどうであろうか。
急いで歩くのではないだろうか。
人は不安であったり、恐怖感に支配されている時に早く歩く。
同じ人でも早くなる。不安な時の方が歩行ばかりでなく、仕事も早くなる。
つまり神経症者というのは心の底に不安や恐怖を宿しているのではないだろうか。
そしてその様に恐怖を感じながら急いでいる時に、その行く手の障害に
なるものには物凄く怒りを感じるのではないだろうか。
急ぐ理由があって急いでいる時に、障害が現れてもそれほど腹が立たない。
もちろん腹が立つであろうが、神経症的に急いでいる時に比べれば腹は立たない。
内面の不安や恐怖に駆り立てられて急いでいる時の障害は、
その人をより不安に、より恐怖に陥れる。
そこで自分の行く手の障害に対しては過剰に反応するのである。
それは文字通り急いでいる時から、急いで仕事をしている、
急いで遊んでいる時まで同じ様に過剰に反応する。