神経症者は冷酷なまでに利己主義か、あまりにも非利己主義である

恋人同士が本気で別れる時には、
「あなたさえ幸せであるなら、私はそれでいいの」とは言わない。
事情があって、恋人が本気で身を引く時には、こんなことを言わない。

なぜ、こうしたような言葉を相手は言うか?
これを言わないと、相手は自分のことを分かってくれない。

親子の場合なら、そうでも言わないと、この子が親から離れていくと感じる。
そう感じるから、こうした類の言葉を言う。

本当に身を引く時には決意をしているから、そんなことは言わない。
本来身を引く時には相手にくだくだとは言わない。

この言葉を言う母親の心理と恩着せがましさの心理は共通しているところがある。
両者ともに相手を自分の思うように操作しようとしている。

そして両者共に自分がない。自分で幸せになる力がない。
親になってもまだ幼児の頃の強度の依存性を残している。

「私はどうなっていいの」と言う時には、その人は決して相手の自由を許さない。
「私はどうなっていいの」という言葉に隠されたメッセージは、
「私の期待通りにしろ」という意味である。

言葉は非利己主義であるが、隠されたメッセージは冷酷なまでの利己主義である。
彼らはなぜそこまで非利己主義なのか。

それは人から利己主義と思われることを怖れているからである。