甘えることも反発することもできない
急に上機嫌になったり不機嫌になったりする親が、子供に向かって
「お前はいい子だ」と頭をなでる。
しかし子供は、その親の言葉に対して自分の反応の仕方をちょっとでも間違えれば
とたんに不機嫌になって渋い顔をすることを知っている。
だから、どんなに「いい子だなあ」と言われて頭をなでられても、態度では甘えるかも
しれないが、心の中では用心深く緊張している。
また「いい子だなあ」と頭をなでられれば、「バカ野郎」とか「うるせえ」とか怒鳴って
親から逃げ出したり、反発することもできない。
つまり、反発することも、心安らかに甘えることも、どちらもできない。
そこで子供はすくむ。緊張し体を固くしていい子として行動する。
それ以外に弱々しい子供の選べる道はない。
神経過敏な人間になっていくのは、このように反発することも、甘えて一体感にひたることも
どちらもできない幼年時代、少年少女時代を送ってきた人であろう。
人が自立するためには、一回どっぷり甘えて一体感にひたり、そこから独り立ちしていくという
過程が必用である。神経過敏な人は、このような過程を持てなかった人である。
つまりこの世の中のどこともつながっていない人である。
神経過敏な人は根元的なところで人と離れている。
幼児の時、ただの一度も根元的に親とつながることができなかった。
したがって、そこから自立することもできない。