目に見えるもので幸せかどうかは決められない
幸せについて考える時、決定的な間違いは、
あの人は、これだけ恵まれているのだから幸せだと思うことである。
人が幸せか不幸せかは、目に見えるものでは決められない。
だから巨万の富を持ちながら自殺する人がいるのである。
人にとって何が不満かは、目に見えることで恵まれているか
恵まれていないかではない。
生存の問題は政治の役割であるが、実存の問題は政治の直接の役割ではない。
政治は現実の苦しみに直接影響するが、心の苦しみには直接影響しない。
豊かになったからといって、人間のエゴがなくなるわけではない。
豊かになったからといって、無力と依存性という人間の宿命は変わらない。
悩みは、経済的豊かさとは関係ない。
幸福について決定的な錯覚は、幸福は現実の苦しみが少ないことと思ったことである。
神経症者は現実の苦しみがないのに、生きるのが苦しい人。
現実の苦しみと心の苦しみは、直接にはまったく関係ない。
決定的な誤りは、現実の苦しみを減らすことが幸せにつながるという考え方である。
現実に起きているのはたいしたことでない問題なのに、大騒ぎして
苦しいと訴える人もいる。
心の中の苦しみが外で起きていることを通して現われてくる。
それは起きていることが問題なのではなく、苦しいと訴えている人の
心の中の苦しさが問題なのである。