組織の中で働くのに年齢にふさわしい情緒的成熟は必要である

入社試験の面接では他人との協調性をよく問題にする。
だがそれは、何が何でも他人の顔色をうかがって他人と協調していこうとする
人間を望んでいるのではないだろう。

自分の意見があるのに言わないで、他人に合わせようとするようなタイプの
人間を会社が望んでいるわけではない。

他人との協調性を会社が問題にするのは、人と一緒に仕事をするのが嫌いな人、
人と一緒にいると楽しいのではなく疲れてしまう人、そんな人では
会社が困るからである。

一般的に言えば、仲間をつくらない、あるいはつくれない人、他人を避ける人
というのは、あまりエネルギッシュに仕事をしないということを知っているからであろう。
会社の仕事は学者が研究室に閉じこもって仕事をするのとは違うのである。

人と一緒にいると何もしないのに疲れてしまうという人は、当然、
人と一緒にいると精神的に緊張している人である。
この精神的緊張で疲れてしまう。

休憩時間に同じ課の人間と喫茶店に行って話していても疲れてしまう。
休息のため、気分転換のためにコーヒーを飲みに行くのであるが、
それでも決して疲れがとれるということがない。
ただコーヒーを飲んでいるだけでも疲れてしまう。

それは、自分の前に同じ会社の人間がいるからであろう。
彼にとっては、他人と一緒にいることそのことが、辛い大きな仕事なのである。

だから、会社で書類を作成する仕事も、喫茶店に仲間とコーヒーを飲みに行って
座っているということも、言ってみれば精神的エネルギーを必要とする
同じような仕事なのである。

人と付き合うのが好きな人は、皆と集まってとりとめのない世間話をしていても
疲れたりはしないし、それなりに楽しい。

しかし、これとは逆の人間は、これといった目的もなく皆と集まって話を
していることも仕事になってしまう。

人との何気ない無目的な付き合いが楽しいというのが、その人がその年齢に
ふさわしい情緒的成熟をしているということの、一つの指標である。

会社が他人との協調性を新入社員に求めるというのは、実は情緒的成熟を
求めているということであろう。