理由は分からないがいつも焦っている

結合体験は普通は母親によって与えられるものであるが、
母親が心理的に葛藤がある場合などは、無理である。

母親の心理的不安定を子供は敏感に感じ取るし、母親が
全くそのような愛撫を子供に与えることに関心がないこともある。

幼児期の結合体験は、人の一生を通じて心理的安定にとっては
極めて大切なものである。

ただこれを与えてもらえなかった人は、与えられたかったと
いうことを自覚することである。

自分の心理的不安定を正義や道徳を持ちだして合理化しないことが大切である。
この合理化をしていると生涯にわたって心理的安定は得られない。

子供は母親の胎内にいる時から母親の心理的不安定を感じている。
母親がイライラしていたり、焦っていたりということは
小さな子供にとって世界が自分を拒否していることに感じとられるであろう。

どんなに経済的に貧しく生まれても、幼い頃安心して母親の胸に
顔を埋めていられた人、母親の優しい愛撫を心ゆくまで味わえた人は、
巨万の富がありながら、怒りを抑圧している母親のもとで育った人より
はるかに幸せである。

子供の心に影響を与えるのは親の意識ではなく親の無意識である。
親が憎しみを抑圧している時、子供は世界が自分を拒絶していると感じるに違いない。

エゴイストで自己中心的な母親に育てられれば、何がということはないが
何となく安心して生きられないような大人になっていくであろう。

世界が自分を拒否していると幼い頃感じてしまった人は、
何となく生きることが不安なのである。

何となくこのままではいけないと感じている。
何がいけないのかと聞かれれば分からないが、何となくこのままでは
いけないと感じている。

いつも心の空白を感じ、それを埋めようと焦る。
しかしどんなに焦って努力しても、その心の空白は埋まらない。

幼い日にできてしまった心の空白を埋めようと焦る人は、生きることがうまくいかない。