無責任な幼児期に戻りたいという願望

ルーズな人よりも几帳面な人のほうが社会的な活動をするうえでは望ましい。
いい加減に物事を済ませる人よりも完全主義な人のほうが、
どちらかと言えば社会から望まれる。

無責任な人よりも義務感・責任感が強い人のほうが望ましい。
問題は何故、そのように社会的に望ましい行動をする人が
挫折するのか?ということである。

それは何故、そのように社会的に望ましい行動をしようとするのか?
という動機に問題があるからである。

もちろん義務感・責任感が強いこと自体に問題があるわけではない。
何故、義務感・責任感が強いのか?その動機が問題なのである。

それは、他人に自分をよく印象づけようとすることである。

競争心をもって目的を達成しようとすることも望ましい。
怠け者よりも目的をもって頑張っている人のほうが望ましい。

問題は、どのような競争心をもっているのかということである。
憎しみの感情から、人を見返そう、称賛を得ようとして目的達成を
目指すとなると日常生活での人間関係に問題が出てくる。

つまりうつ病になりやすい人の問題をひと口に言えば、不安や憎しみが
動機となって、几帳面で、完全主義で、徹底的で、義務感・責任感が
強いことなのである。

うつ病になりやすい人の仕事熱心ほど、行動と心がバラバラで
矛盾していることは珍しい。外見的な性格は社会的に見て望ましい。

仕事熱心も義務感・責任感の強さも情緒的に成熟した証である。
しかしその心にあるのは退行願望である。彼らの心の底にあるのは
無責任な幼児期に戻りたいという願望である。

義務感・責任感が強いように見えるが、じつは無責任でいたい。
仕事熱心に見えるが、実は怠けていたい。

うつ病になる前は、この退行願望が表面には出ない。
しかし、心の底にあるのが退行願望なのである。

うつ病になりやすい人は退行願望をもちながら、表面上は全く逆の
義務感・責任感の強い仕事熱心な人を演じているのである。

毎日がつらいに決まっている。
内と外とがバラバラになっていれば、長い間にいつかは破綻する。